デザインは見た目を飾るものじゃない。頭の中のあふれる未来のプランを形にしたら、経営者さんの人生の原点に繋がった話。

こんにちは、デザイナーの佐津川はるなです。

突然ですが、経営者のみなさん。
事業が成長して新しいアイデアや未来へのビジョンがどんどん広がっていく時、それをどうやって形にまとめていますか?

想いが強くて、事業が多角化していくのは本当に素晴らしいことです。
でもその膨大な活動内容をそのまま全部デザインに詰め込んでしまうと、情報量が多すぎて、結果的に「何をやっている場所なのか分からない…」なんてことになりかねません。

今回は、ある教育・福祉等事業の包括ブランド立ち上げに携わった事例を通して、経営者の壮大なビジョンをどうやって「伝わる1つのシンボル」へと集約していったのか。その思考の舞台裏をお話しします。

目次

第1章:包括ブランドの立ち上げ。これからの未来を指し示すシンボルが必要!

今回のクライアントである経営者さんは、時代の変化を見据えて、これまでの子供向け教室だけでなく、赤ちゃんから高齢者向けの活動、さらには起業支援や人材育成まで、事業を大きく広げようとされていました。

目の前には、これまでの枠には収まりきらない未来への計画と確固たるビジョン。これら多岐にわたるすべての活動を包括する新ブランドを立ち上げるという、大きなステージアップのタイミングでした。

経営者さん自身、やりたいことの軸は明確に決まっています。ただ、これだけ多くの要素を抱えた新ブランドだからこそ、これから出会うすべての人に対して「わたしたちは、こういう存在です」と一発で信頼を届けるための確かなシンボルが必要になっていたのです。

そこで、新ブランドの未来を背負うロゴデザインを、わたしが担当することになりました。

第2章:なぜAIで作ったロゴでは物足りなかったのか?本質を見極める取捨選択。

実は最初、この経営者さんはChatGPT(AI)を使って自分でロゴを作ってみたそうです。けれど、悪くはないんだけどイマイチ物足りない。そんな状態のときに「正式に作ってほしい」と依頼をいただきました。

なぜAIのロゴでは物足りなさを感じてしまうのか。
それは、エネルギーのある経営者のビジョンは、それだけ膨大で多面的な価値を持っているからです。AIは言われた要素をそれっぽく組み合わせることは得意ですが、その膨大にある活動や情報の中から、何が本質で何が必要なのかを整理することはできません。

チラシでもWEBサイトでも、ロゴでも同じ。伝えたい価値が多いからといって、すべての要素をただ同じ熱量で詰め込んだデザインは、ターゲットを視覚的に圧倒し、本当に大切なメッセージを濁らせてしまいます。

大切なのは「整えること」。そしてその形が「これから出会う未来のお客様にとってのベネフィット(信頼感)」になっていることです。

新しく目指すのは、行政や地域とも深く関わる社会的な信頼感が求められるステージ。必要なのは表面的なデザインではなく「老若男女誰が見ても一発でわかる、単純明快な想いと信頼感」です。

ここから、デザイナーとしてのわたしの「思考の整理」が始まりました。デザインをする上で大切なのは、ただ相手の意見をバサバサと削り、見た目だけを整える作業ではありません。経営者から溢れ出るすべての要素をきれいに整えた上で、何が本質で、何が本当に必要なのか。その取捨選択を徹底的に行うこと。そして、これはAIには真似できない仕事なんです。

第3章:周りが全員「鼻あり派」でも、プロとして意見を貫いた理由。

デザインを実際に提案していく中で、ちょっとした分岐点がありました。

今回のロゴを作るにあたって、経営者さんからは「今までやってきた子供向け教室のロゴのイメージを引き継いだものにしてほしい」というリクエストがあったんです。元のロゴは色づかいもポップで、両サイドに男の子と女の子の可愛いお顔がついています。

「なるほど、あのイメージね!」と思ったわたしは、デザインしていたロゴに鼻をつけて笑顔を強調したパターンを、形をいろいろ変えながら何パターンも作って検証してみました。

で、その鼻ありパターンを経営者さんや一緒に働く人たちに見せて意見を聞いてみたところ、周りの反応は「圧倒的に鼻あり派」が優勢だったんです。「今までのイメージもあるし鼻があった方がいい!」って。・・・ガーン。

普通ならここで「みんなが良いって言うから、鼻ありで決定!」って流れになりますよね。でも、首を縦に振らないのがわたし。みんなが鼻ありを推す中で、わたしは鼻なし一択でした。

なぜそこまで言い切れるのか。理由はすごくシンプル。鼻を入れちゃうと、そのマークは「笑顔」にしか見えなくなってしまうから。鼻は鼻でしかないんですよね。

このロゴの本当の価値は、実は「見る人の状況によって、いろんな意味に見える余白」があることなんです。

  • 大人(青)と子供(赤)が、大切な種と芽(黄)をそっと包んで守っているように見えたり、
  • 3つの色(色の三原色)で、どんな未来の色にでも変化していける多様性を表していたり、
  • パッと引いて見たときには、全体が優しい笑顔に見えたり。

新しく立ち上げるブランドは、赤ちゃんから高齢者まで色んな人を包み込む場所。だからこそ、この「いろんな意味に見える」という多様性が絶対に必要でした。鼻という要素を1つ足すだけで、そのロジックが崩れてただの顔のマークになってしまう。そこはプロとして譲れないところでした。

第4章:正解を押し付けない。経営者が納得して決める環境を。

だからと言って、わたしは自分の好みを押し付けるデザイナーではありません。

鼻の有無や何パターンもの配色データを、実際の名刺やSNSのアイコンのダミーに落とし込んで、経営者さんにじっくりと客観的に眺めてもらいました。

プロとしての意見はハッキリ伝えますが、最後には経営者に判断を委ねます。 経営の最後の判断を下すのは、経営者自身。すべてのロジックと選択肢を誠実に提示した上で経営者が出した答えこそが、そのビジネスにとって常に最良になります。

何度もダミーを眺めていた経営者さんが、ふとわたしに聞きました。「はるなさんは、どう思いますか?」

「わたしは、鼻なしがいいと思います。鼻は鼻でしかなく、多様性の意味を生かしたいからです。」

わたしのブレないロジックを聴き、何度も画面を見つめていた経営者さんは、最後にこう言いました。 「……うん、何度も眺めていたら、やっぱり鼻なしがいい気がしてきた。」

こうして、現在のシンプルで美しいロゴが決定したのです。

第5章:【後日談】本質まで掘り下げた先に待っていた、原点とのつながり。

実は、このお話には最高の後日談があるんです!

ロゴが完全に決定したあと、経営者さんが思い出したかのように、こんな話を教えてくれました。
「実はわたしの子供時代に、自分の目印というかサイン的な意味で使っていたマークがあったの。それが丸の中に、芽のマークがあるデザインだったんだよね。わたしの名前には、『芽吹きのように、どんなものにでも興味を持って取り組めるように』っていう由来があって。今回作ってくれたこのロゴを見て、自分の原点に帰ってきた気がした。」

(……先に聞きたかった!笑)

このきれいな答え合わせは、偶然だけで起きたものではないと思っています。そして今の時代に流行りのAIには、逆立ちしても絶対にたどり着けない境地だと思っています。

AIに「ロゴを作って」と頼めば、それらしい綺麗でお洒落な形は一瞬で無数に吐き出されます。しかしAIができるのは、こちらが入力したキーワードを確率的に組み合わせることだけ。

経営者の子供時代の記憶や、名前に込められた願い。そして現場でともに過ごし、浴び続けてきた未来へのビジョンの言葉シャワー。これらをすべて掛け合わせ、一つ一つの本質まで丁寧に掘り下げて必要な情報を選択し、シンプルに、ロジカルにまとめていくことなんて、AIにはとても不可能です。

表面的なキーワードを満たすだけのデザインならAIで十分。だけど、その人の人生の原点と、これからの経営戦略が一本の線でつながるような本物のシンボルは、人間同士の対話からしか生まれません。

とにかく本質まで掘り下げて必要な情報を選択し、シンプルにロジカルにまとめていった結果、自然とこのカタチにたどり着いた。これが、わたしが提供している思考の整理から始まるデザインの価値だと思っています。

第6章:デザインは、事業のブレない土台。

デザインとは、表面をただ綺麗に着飾るためのものではありません。 経営者さんの頭の中にあるあふれる想いや計画を、論理的に整理して、本当に伝えるべき価値にまとめるための、いわばブレない土台なんです。

ロゴが変われば、名刺が変わり、発信が変わり、経営者自身の覚悟が変わります。現に今回の経営者さんも、この新しいロゴと事業内容を整理した名刺を手にしたことで、自信を持って次のステージへの交渉を進めています。名刺交換の際に、この名刺があることでとても説明や話がしやすくなったと言っていました。

もし、あなたが今「やりたいことはたくさんあるのに、頭の中が散らかってうまく伝えられない」「自分の事業の本当の強みを1つの形にまとめられない」と一人でぐるぐる悩んでいるなら、その頭の中の言葉を、一度わたしにバシッとぶつけてみてください。

20年のキャリアをもとに、あなたのビジネスの次のステップを決めるブレない土台を、一緒に作っていきましょう。

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